脱・脱原発へ 2012 11 4

書名 ニューズウィーク日本版 2012 10 31
    「脱原発ドイツの後悔と教訓」「脱原発のコスト」

 日本のエネルギー政策について、教訓となることについて、
記事から引用しましょう。
「原発と生きるフィンランドの覚悟」
 脱原発の動きが広がるなか、
独自の原発推進路線を歩んでいる国が北欧にある。
フィンランドだ。
 既存の4基に加えて、
新たに3基の原子炉を建設・稼動しようとしている。
 「フクシマ」の後も安全検査こそ実施したが、
原発を増設する政府の方針は、微動だにしなかった。
 その政策を支えているのは、
南西部にあるオルキルオト原発の近くで建設が進む、
世界初の巨大な最終処分場だ。
(中略)
 一時の熱情から脱原発を決めたドイツは、
電力不足に悩まされ始めている。
 周辺諸国がドイツに電力を輸出するため、
原発を造り始めるという皮肉な現象も生まれた。
 脱原発の理想と現実の間で、さまよう日本やドイツと、
フィンランドは、何が違うのか。
 フィンランドにあって、日本とドイツにないのは、
優先事項や許容できるリスクを合理的に判断し、
一度決めたらブレない姿勢だ。
(中略)
 再生可能エネルギーが現実的に原子力に取って代われるのは、
2100年代とされる。
(中略)
 (フィンランドが再生可能エネルギーと原発を、
共に増やすという一見矛盾する政策を取っていることに対して)
「フィンランド人は、原発推進派ではない。
論理的、合理的に考えた結果の選択であって、
情熱やイデオロギーの問題ではない」と、
駐日フィンランド大使は言う。
「脱原発優等生ドイツの憂鬱な現実」
 電力供給の不安と電力料金の高騰に企業は悲鳴、
消費者も不満が爆発寸前。
早くも「脱・脱原発」の機運が高まり始めた。
 ヨーロッパの大半の国のメディアは、
東日本大震災と津波の被害を報じたが、
ドイツのテレビ、ラジオ、新聞は、
ほぼ原発事故で一色になり、
原発の恐ろしさを強調する、
おどろおどろしい報道を続けた。
(中略)
 問題は、原発に代わるエネルギー源をどうやって確保するかだ。
何しろドイツは昨年3月まで、発電量の23%を原発に頼っていたのだ。
 メルケルが慌ただしく脱原発を決めて以来、
この点がドイツにとって深刻な悩みの種になっている。
 一部の原発が稼動停止したことに伴う電力料金の高騰に、
消費者は激しく反発している。
 産業界は停電を懸念しており、
生産施設を国外に移転させる可能性も、ちらつかせ始めた。
 近隣諸国は、ドイツの電力輸入が増加して、
ヨーロッパの国々が電力を融通し合う国際送電網が不安定化することを恐れている。
(中略)
 雨と曇りの日が多いドイツは、
お世辞にも太陽光発電に適しているとは言えない。
 それなのに、補助金のおかげで、
2位以下を大きく引き離して世界一の太陽光発電大国になっている。
(中略)
 そのコストを負担するのは消費者だ。
(中略)
 特に低所得層への影響は大きい。
消費者団体によれば、
既に80万世帯が電気代の支払いを滞納し、
電気を止められそうになっている。
 その一方で、投資家や裕福な地主は、
太陽光発電施設や風力発電施設への投資や土地貸与によって、
懐を潤わせている。
(中略)
 再生可能エネルギーは電力供給が不安定という問題もある。
原子力や火力と異なり、風や太陽は天候頼みだ。
 このため電力供給への貢献度は、
0%のときもあれば20%のときもある。
 十分な電力を供給できない場合に備えて、
電力会社は、従来型の発電施設をスタンバイさせておかなければならない。
(中略)
 バックアップ用の発電所を動かしたり止めたりするのも、
非効率極まりない。
 電力会社にとっては、コストが一段と膨らみ、
再生可能エネルギーに投資する魅力は、ますます薄れる。
(以上、引用)

脱脱原発へ 2012 8 26

 このタイトルは、読みにくいかもしません。
本当は、脱「脱原発」と書けばよかったかもしれません。
 私は、先日、こう書きました。
「脱原発を宣言したドイツが、いつまで持ちこたえられるか。
結局、脱原発を脱する日が来るでしょう」
 さて、2012年8月22日の読売新聞には、このような記事があります。
「ドイツの脱原発政策 膨大コスト、強まる懸念」
 大規模な沖合風力発電所が立地する北部と、
産業の中心地・南部を結ぶ3800Kmの高圧線建設は、
脱原発実現にとって不可欠。
 しかし、各地で環境保護団体の反対運動に直面。
これまでに建設されたのは、2009年に計画された分の200Km程度にすぎない。
 また、再生可能エネルギーによる不安定な電力供給を補うため、
当面、増設が必要な石炭などの発電所も、
電力業界は、巨額の投資に見合うだけ長期に稼動する見通しが立たないなどの理由で、
二の足を踏んでいる。
 政策のちぐはぐさも問題だ。
過剰発電による負荷を防ぐため、
一部の風力発電所の稼動を停止させている実情もある。
 アルトマイヤー環境大臣は、19日、
「風力発電所は造りすぎ。
送電できず稼動できないなら、造っても意味はない」と本音を口にした。
 環境大臣は、16日には、州ごとに、
再生可能エネルギーの発電目標を設定して、
過剰発電をなくすことなどをうたった10項目計画を発表している。
脱原発政策を事実上、調整するものだ。
(以上、引用)
 そう言えば、私が子供の頃、
50万ボルトという、途方もない高電圧の送電線を造るという計画に、
地元では、反対運動が起きたことがありました。
 しかし、電力を遠くまで送るには、「超高電圧」にするしかないのです。
高校の授業で習ったと思いますが、
電圧が高ければ高いほど、送電損失が少なくなります。
 最近は、50万ボルトどころか、
ちょっと怖い感じがしますが、100万ボルトによる送電も計画されています。

脱脱原発 2012 7 22

書名 原子力ルネサンス エネルギー問題の不可避の選択
著者 矢沢 潔  技術評論社

 脱原発を宣言したドイツが、いつまで持ちこたえられるか。
結局、脱原発を脱する日が来るでしょう。
 それは、ドイツのエネルギー事情を考えれば、明白です。
歴史的には、ドイツ発展の原動力は、石炭です。
近年は、世界最高水準の技術を持つ原子力だったでしょう。
 著者によると、「多くの日本人は、
ドイツといえば、脱原発と風力発電の環境先進国と単純に信じているが、
それは、自分の見たい部分だけを見て頭の中に作り上げた、
少女漫画的な世界といったところである」と手厳しい。
 この本では、ドイツのエネルギー事情をわかりやすく説明しています。
「ドイツは、EU諸国の中では、最大の石炭資源を持ち、
EU最大の石炭消費国である。
 ドイツは、18世紀から19世紀には石炭火力によって産業革命を成し遂げ、
また第二次世界大戦後には、やはり石炭火力によって、
ドイツの奇跡と呼ばれる経済復興を実現した。
 ドイツの石炭統計によれば、
今でも国内のエネルギー消費全体の40パーセント以上が、
石炭によって、まかなわれている」
 問題は、その石炭です。
どういう問題があるかというと、こういうことです。
「ドイツ南部から長年にわたって掘り出されてきた石炭のほとんどは、
もっとも低品位の褐炭である。
 高品位の無煙炭や瀝青炭と異なり、
褐炭は、多量の水分、不純物、気泡などを含み、
炭素の含有率が小さいために、
燃焼効率(発熱量)が低いだけでなく、輸送や貯蔵が困難であり、
また大気中に放出される二酸化炭素も桁外れに多い。
他のEU諸国からは、その『汚さ』も批判の対象になってきた」
 そこで、環境先進国?のドイツ政府は、
これらの炭鉱は、2018年までに、すべて閉鎖すると発表したという。
 自国の電力の主力が、
膨大な二酸化炭素や硫黄酸化物、窒素酸化物などを撒き散らす褐炭火力発電では、
(2004年でも電力供給の55パーセントに達した)
国際社会での発言に説得力がない。
 そこで、どうするのか。
この本によると、高品位の石炭を海外から輸入するという。
結局、それでは、石炭依存のエネルギーは、変わらないと思います。
 ドイツで有名な風力発電は、ドイツ政府エネルギー局が、
2005年に提出した報告書で、
「持続的エネルギーとするには、風力発電はコストが高く、かつ非効率である」と、
風力発電の「本家」が経験に裏付けされた報告書を出しています。
 太陽光発電の問題については、「自然エネルギー 2012 4 21」を参照してください。
これも、ドイツで「経験に裏付けされた」現状報告となるでしょう。
 このような状況で、脱原発を宣言したドイツは、
はたして、エネルギー政策をどうするのか。
 「原発から撤退し、石炭火力も閉鎖したら、
この国は、深刻なエネルギー不足に陥る」
著者の知人であるドイツ人は、そう嘆く。
 著者は、彼を安堵させるために、こう言った。
「ドイツ人は、そんな心配をする必要はない。
フランスから原発電力をいくらでも買えばよい。
ドイツは、実際には原発電力で生活しながら、
原発から撤退したと言い張ればよい」
 私は、こう思う。
「それは、企業で言えば、粉飾決算のようなものだ」

自然エネルギー 2012 4 21
 2012年3月16日の朝日新聞には、このような記事がありました。
「太陽光発電 ドイツ、曲がり角」
 ドイツの太陽光発電が曲がり角を迎えている。
自然エネルギーによる電力を
固定価格で買い取る制度により普及を続けてきたが、
この2年間、発電パネルの新規設置が急増したため、
買い取り費の電気料金上乗せによる国民の負担増が無視できなくなった。
 政府は買い取り価格の大幅な切り下げを決めたが、
反対意見も広がっている。
(以上、引用)
 私は、前々から気になっていたことがあったのです。
それは、「なぜ、ドイツで太陽光発電なのか」ということです。
 砂漠地帯に太陽光発電設備を設置するならばともかく、
ドイツの気候を考えれば、
太陽光発電は無理があるのではないかと思っていたのです。
 やはり、記事には、このような指摘があります。
「ドイツは、日照時間が短く、
特に冬は厚い雲に覆われる日が多い。
太陽光発電の適地とは言い難い」
「ドイツのレスラー経済相は、
太陽光発電の実際の発電量は、全体のわずか3%なのに、
再生可能エネルギー法賦課金からの補助額の半分が、
太陽光に使われていると述べている」
 自然エネルギーを推進することは、大いに結構なことですが、
やみくもに推進することは、大きな過ちです。

















































































































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